檜山久雄
レグルス文庫
時代の闇と格闘しつつ民衆の魂の変革を希求した革命文学者の闘いの軌跡
二十五歳の魯迅は母親の病気という偽りの連絡で東京から呼び戻され、母親のたっての要望で結婚をさせられた。三歳年上の妻は纏足(てんそく)をした、文字を解さない旧弊そのものの女性だった。 この結婚は魯迅にとって生涯の重荷となり、わずか四日の滞在で中国を後にして東京に戻ってきた。魯迅の思想・文学の原型は、この二十一歳から二十八歳までの日本留学期に形成された。 文学によって民衆の魂を覚醒・変革を図ろうとした魯迅、歴史の闇と格闘しつつ、敵にはどこまでも厳しく、友には温かい眼差しをそそぎ続けた革命文学者の闘いを描く。 [目次] 序章 原点としての日本留学 第一章 「狂人日記」の狂気 第二章 魯迅流の「吶喊」(とっかん) 第三章 「彷徨」の人 第四章 野の草のつぶやき 第五章 左翼陣営とのかかわり 第六章 故事を語る 第七章 最後の論争、そして死