大庭 登
37人の「生きっぷり」 なんと見事な「生きっぷり」か。 不況があり、戦争があった。 昭和の人生はハンパじゃない。 作家は筆一本で生きた。 その生涯は一篇の物語である。 大庭氏は37人の熱い物語を熱く伝えた。 (出久根達郎)
[目次] 三百編超した「銭形平次捕物控」 野村胡堂 五十過ぎてから義太夫と日本画 佐々木 邦 名作『瞼の母』で母探しを公開 長谷川 伸 人間らしく生きられる世を念願 武者小路実篤 「死んで行くのは存外楽なもの」 里見 弴 几帳面、人間好きで、人間嫌い 内田百閒 〝打ち倒れるまで〟の創作活動 白井喬二 恋人の魔性に取り憑かれながら 宇野浩二 生活苦とスランプに耐えて闘う 広津和郎 貴重な聞き書き『新選組始末記』 子母澤 寛 フランス留学が人生の大転機に 獅子文六 日本探偵小説の第一人者として 江戸川乱歩 劇的なノンフィクションに挑む 大佛次郎 六十歳手前で直木賞受賞の根性 今 東光 よき師、よき友に恵まれた人生 山手樹一郎 小さなものでも喜び合えるもの 宮本百合子 桃栗三年柿八年柚の大馬鹿十八年 壺井 栄 文学のために〝人非人〟になる 尾崎一雄 西郷隆盛への深い敬愛と反骨心 海音寺潮五郎 プロレタリア文学の代表的作家 中野重治 魔術師の如く吐き出す探偵小説 横溝正史 苦しみつつ常に希望描いた作品 山本周五郎 周囲惑わした大名趣味や権威風 舟橋聖一 男性と貧乏に鍛えられた気丈さ 平林たい子 涙もろい正義漢が念願した平和 山岡荘八 かめれおん的擬態が隠した文才 中島 敦 出自の悩みの影を落とす作品群 椎名麟三 どんな考えも肉体を基盤にする 田村泰次郎 人間の善悪の二面性を強く意識 武田泰淳 麻薬による不遇超え才能を発揮 船山 馨 〝眠り〟から狂気の世界へ誘う 柴田錬三郎 現実の大いなる矛盾を超え創作 福永武彦 ヒーロー人気で剣豪小説ブーム 五味康祐 異常に強かった克己心と潔癖性 三島由紀夫 行間にバックミュージック漂う 立原正秋 仁義なき読者との壮絶なる闘い 梶山季之 阿修羅の如く「わが解体」を叫ぶ 高橋和巳 あとがき 大庭 登