フロム思想の新展開を告げる隠された遺稿。本書は、現代の精神状況に予言的な危機感を抱いたフロムが残したわれわれへの遺稿であり、自己存在の覚醒を促す警告の書である。 一九七四年から一九七六年までのあいだ、エーリッヒ・フロムは、スイスのロカルノにある家で著作『生きるということ』〔To Hava Or to Be?<持つ>べきか<在る>べきか〕に取り組んでいた。この本は一九七六年に出版されたが、実はこのとき、実際に使われたよりもはるかに多くの草稿と章が、老フロムによって書きためられていた。それらの章のいくつかを編んだのが本書である。そこで扱われているのは、主に、「<存在>へのステップ」であった。つまり、それをたどることで、「<存在>の技the art of being」が習得されるような、さまざまな段階が扱われていたのである。
【編者序文 ライナー・フンク 本書の成り立ち より】