江戸っ子が好んだ日々の和食
江戸は世界に誇るグルメ都市だった!──庶民の食卓から、屋台の繁昌、料理茶屋での接待、豪華弁当、大食いイベントの開催、そして江戸のスイーツまで──。江戸っ子の食生活を説き明かし、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された「和食」のルーツをめぐるさまざまな話題や豆知識をこの1冊に凝縮。
- 定価:
- 1,650円(税込)
- ISBN:
- 978-4-476-03358-8
- 体裁:
- 四六判ソフトカバー
- ページ数:
- 240ページ
- 発刊日:
- 2016年6月1日
- 在庫状況:
- 在庫あり
【目次】
はじめに──和食は伝統的な日本文化
第一章 江戸の食事情
長屋の朝は飯炊きからはじまる
長屋にやってくる棒手振
豆腐は庶民の重要な健康食
田楽豆腐から多様な田楽へ
庶民に人気のあった「おかず番付」
料理との相性がいい米の飯
白米の普及が生んだ奇病「江戸煩い」
漬物を多様化させた米糠
下級武士が利用した賄屋
上司へ弁当を振舞う武士
屋台では下級武士も外食を楽しむ
将軍と大名の食事情
武家が食べなかった食材
大奥のぜいたくな食事
第二章 江戸でつくられた和食の基本
一日二食から三食へ
和食文化は江戸で成熟
独自の工夫をした精進料理
精進料理の枠を超えた豆腐と納豆
和食に影響をあたえた卓袱料理
宴会好きな日本人
「一汁三菜」のバランスと漬物
糠漬は健康的な食べ物
なぜ「香の物」というのか
第三章 江戸の味──旨みと発酵
和食の旨みを引き出した発酵
初期の江戸は「手前味噌」が主流
江戸中期に出てきた「合せ味噌」
こくのある風味を好む江戸庶民
江戸の味をつくった味醂
日本料理は砂糖をよく使う
多様化した酢の調理法
江戸で消費した塩
一般的ではなかった刺身
和食を支える「旨み」と「だし」
鰹節の旨さの秘密
昆布だしの旨み
梅干は疲労回復にも
第四章 江戸が育てた新しい食
食文化の発信源だった屋台
世界語になった「SUSHI」
握り鮨が主流になった理由
下魚扱いされた鮪
冬の定番になった「ねぎま」鍋
細長い蕎麦の登場
屋台で食べる「ぶっかけ蕎麦」
天麩羅好きな江戸庶民
なぜ「天麩羅」なのか
天麩羅を引き立てる濃口醬油
料理茶屋で出した奈良茶飯
高級な料理茶屋の出現
「八百善」の献立と代金
贈答品となった料理切手
観劇用だった幕の内弁当
薬食いと牛鍋の流行
こだわりの食文化を生んだ「百珍物」
鰻の蒲焼は江戸の自慢
「鰻丼」の大流行
「初鰹」の不思議な人気
高価だった初茄子
初物食いを規制した幕府
大食い競べと驚異の胃袋
第五章 晴れの食生活を楽しむ
重詰のおせち料理
重詰の基本 田作/数の子/黒豆/ちょろぎ/叩き牛蒡/凍み蒟蒻
個性的な黄色い料理 きんとん(金団)/伊達巻き
重詰の煮物 昆布巻き/煮しめ
第六章 四季折々の美味
春の味覚
白魚のおどり食い/女性の祝い事に使った蛤/江戸庶民の好物鰶/薄紅色の桜鯛/香気を味わう山葵/おひたしにした土筆/蕗のさわやかな香り/嫁菜の吸物
夏の味覚
七夕に食べる索麵/さわやかな風味の筍/旨い土用蜆/泥鰌汁が夏の栄養源/暑さを忘れる夕鰺/消夏法として飲む甘酒/涼しさを求めるトコロテン(心太)/さっくり感が人気の西瓜
秋の味覚
人気の菜飯/秋に旨くなる沙魚/力仕事の男に人気の秋刀魚/月見に食べる枝豆/旨み成分の多い椎茸/蛸と煮合わせる里芋/女性に人気の薩摩芋/赤飯や餡に使う小豆
冬の味覚
ほっこりとする蕪汁/磯の香を楽しむ浅草海苔/冬に人気の鍋、葱鮪/河豚の刺身は幕末から/寒い季節に旨い八つ頭/旨い深川沖の牡蠣/風呂吹きにする大根/滋養のための薬食い/大掃除のあとで食べる鯨汁
番外・江戸のスイーツ
江戸の名物饅頭/独特の香りが人気の桜餅/串団子と月見団子/家で手づくりした柏餅/煉切からはじまった煉羊羹/江戸っ子の好きな牡丹餅/評判の幾世餅/歌舞伎役者が考案した鹿の子餅/千歳飴は子どもの楽しみ/庶民に人気の江戸スイーツ焼芋/汁粉は冬のエネルギー源
【著者プロフィール】
中江克己(なかえ・かつみ)
北海道函館市生まれ。思潮社、河出書房新社などの編集者を経て歴史作家。歴史の意外な側面に焦点を当てて執筆を続けている。主な著書に『お江戸の役人面白なんでも事典』『お江戸の地名の意外な由来』『お江戸の職人素朴な疑問』(以上、PHP研究所)、『江戸の将軍百話』(河出書房新社)、『忠臣蔵と元禄時代』(中央公論新社)、『江戸の定年後』(光文社)、『新島八重』『黒田官兵衛』(以上、学研パブリッシング)、『図説 江戸の暮らし』『図説 江戸城の見取り図』(以上、青春出版社)、『江戸のスーパー科学者列伝』(宝島社)、『江戸大名の好奇心』『明治・大正を生きた女性 逸話事典』(第三文明社)など多数。