山中正樹
言語では表現し得ない世界を、言語によって表現する。 芥川龍之介、川端康成、村上春樹、川上弘美らが描く 〈非リアリズム小説〉をもとに〈読むこと〉の本質を考える。 「言語や感覚では捉えられないものが世界には存在すると考え、それを表現しようとした作家や作品、〔中略〕例えば、日本を代表する文豪である、森鴎外や夏目漱石にもそうした要素は見られ、特に、芥川龍之介・川端康成・三島由紀夫などがこれにあたる。また現代の作家では、村上春樹・村田喜代子・川上弘美なども、この系譜に連なる作家であると言えよう。 これらの作家は、〔中略〕目の前にある現象や事物の背後に、感覚では捉えられない世界があることを認識の基盤としている。私たちの感覚では捉えられない世界、言語では表現できない世界の存在を、疑わないのだ」(本書「序章」から)
【目次】 はじめに 序 章 日本の近代文学における〈二つの流れ〉について 第一部 深層心理の闇/〈暗黙知〉と世界認識——近代日本文学研究上の課題 第二部 近代日本における〈非リアリズム小説〉を読む 終 章 第三項と〈世界像の転換〉をめぐる「ひとつ」の考察 ——いまこそ文学教育による子どもたちの心の修復を あとがき 【著者略歴】 山中正樹(やまなか・まさき) 創価大学文学部教授・博士(文学)。愛知県名古屋市生まれ。南山大学文学部哲学科卒業。愛知県立高校国語科教員の後、名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期(国文学専攻)満期退学。豊田短期大学日本文化学科講師、桜花学園大学人文学部准教授、創価大学文学部准教授を経て、2012年4月より現職。 著書に『三島由紀夫事典』(分担執筆、勉誠出版)、『「読むこと」の術語集 文学研究・文学教育』(分担執筆、双文社出版)、『表現文化論入門 インターメディアリティへの誘い』(分担執筆、第三文明社)、『高校生のための文章表現法』(三恵社)、『川端康成―文学の構造と〈美〉の生成―』(鼎書房)など。